
先日「汝、星のごとく」を読みこのブログに思った事を綴ったが、続け様に凪良ゆうさんの本を読んだので、備忘録的につらつら綴ろうかと思う。
読んでいる時は知らなかったのだが、「汝、星のごとく」は2026年に横浜流星×広瀬すずさん主演で実写映画化されるとの事。近年私は息子が生まれてから全然映画を観(れ)なくなってしまったのだが、可能ならば大きなスクリーンで観たいなと思っている。2023年本屋大賞受賞作だけあって、心揺さぶられる良作だった。未読の方は是非一読することをお勧めします。
そして今回読んだのは「汝、星のごとく」の続編(スピンオフ)「星を編む」と、2020年本屋大賞受賞作「流浪の月」。私はこの夏転職に成功し、11月より別の職場で働く。そのため10月は有休消化などで比較的時間の余裕があった。なので本来の計画では、この10月を使って1つ資格取得を目指していた。けれど、「汝、星のごとく」を読んで、そんなのどうでもよくなった。
この1月、私は規則正しく朝起き、息子を学校や習い事へ送り、そこそこの距離をランニングし、ブログを書き、そしてその他の多くの時間を「読書」へ費やしてきた。遅読ながら2日に1冊ペースで本を読み続け、うまく表現できないが非常に人生が満たされた気がしている。すっかり忘れていた。
そう、私は純粋に読書が好きだったのだ。
来月から、どうせまた何(十)年と私は働き続けるのだろう。今だけは「本当に好きな事」をさせてくれよ、と自分自身に許しを請うた。
前振りが長くなったが、そんな純粋な思いに気付かせてくれた作家「凪良ゆう」さんの本のお話。
星を編む

『星を編む』 凪良ゆう:著 講談社
先に綴ったが、本作は「汝、星のごとく」に付随するお話。「汝、星のごとく」は主役男女二人の視点で綴られた15年の物語なのだが、当たり前だが登場人物はその二人だけにとどまらない。魅力的なサブキャラがいてこそ作品は輝く。本作はそのサブキャラの視点(だけじゃないけれど)から綴られるもう一つの物語。
心地よかった。ぼくは初めて自らの意志で、誰にも忖度せずに、自らの生き方を選んだのだ。愚かしい選択ではあったが、それがぼくという人間だったのだ。
ー中略ー
ーお父さん、お母さん。
心の中で呼びかけた。ぼくはようやく泣くことができました。あなたたちになんのわだかまりもなくなった今、ぼくはようやく悲しむことができました。そしてようやく解放された気分です。こんなぼくを、どうか赦してください。どうか愛してください。
ぼくは、あなたたちを、精一杯愛していたのです。ー『星を編む』78-79頁より引用
「汝、星のごとく」から一貫している姿勢として、この作品の登場人物たちは様々な境遇から「世間一般の普通」に強く縛られて生きている。最初は苦しい。読み進めるのが辛い。しかし、皆「ある時」から世間一般の視点から見ると「愚かな選択」を自分の意志で選択し、前に歩みだす。
その「ある時」が何とも心地いいんです。
どれだけ多くの人が「殻」を破れるのだろうか、と私は考える。きっと「殻」を破らずに、または「殻」に包まれている事すら気付かず、あるいは「殻に包まれたままでいい」と人生を終える人が大半なんじゃなかろうか。本作の登場人物たちは「そういった物」を皆取っ払っちゃうから、私は強く惹かれるのだと思う。
煌めく目で花火を見上げる若い横顔へと祈った。
この子には無限の未来があり、なににも妨げられず、進みたい道を選ぶことができる。叶うかどうかはわからない。それでも誰もが行きたい場所へ行き、会いたい人に会い、それらを選べる世界であってほしい。それがきっと、あのころのわたしたちが願ったことのすべてなのだから。ー『星を編む』284頁より引用
きっと作者が伝えたい想いと言うのは、上記に凝縮されているような気がした。私はもう若くは無いが、きっと遅すぎるという事もない。「まだ大丈夫」。そんな気にさせてくれる良作だった。
流浪の月

『流浪の月』 凪良ゆう:著 東京創元社
こちらは2020年本屋大賞受賞作。私がぼーっと日々を漫然と過ごしていた時期の作品。おもしろい本があるなら誰か教えてくれたらよかったのに・・・ってそんな話する知り合いいませんでしたわ。
こちらも男女二人が主役だが、交互に視点が変わった「汝、星のごとく」とは違い、本作はほぼ女性の主役視点から語られる。ざっくり内容を言うと本作は、社会に居場所が無い二人が、世間の中途半端な優しさに傷付きながら成長する物語。
事実が真実とは限らない。
本作に度々綴られる上記台詞が心に刺さる。私達は何かしら断片的な情報だけ、あるいは「この状況なら、こうだったんだろう」という思い込みで物事を判断してしまいがち。そしてその前提で当事者に接してしまう。それは「優しさ」のつもりなのだが、当事者達からすると鋭い刃となって彼らを傷つける。
最後の最後まで、世間は「優しさ」の刃を主役二人に振りかざし続ける。彼らの発する真実の小さな声はかき消されて誰にも届かない。けれど彼らは「真実」だけに目を向け、共に生きる事を選択する。事実と真実は交わる事はない。きっとそれは今私が生きているこの世界でも当たり前に起きている事なのだと思う。
女性主役の生来の奔放な性格、そしてやりすぎなくらいピュアすぎる男性主役なので、ちょっと少女漫画っぽい印象を受けたが、扱っているテーマは上記の様に深く考えさせるものだった。本書も是非多くの方に読んでもらいたい良作。今更私が言う事ではないが、面白い作品でした。
こっちも広瀬すずさんで映画化されてるんかい!(無知)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。











