【映画篇】金城一紀さんの本を読む【読書】
金城一紀さんの本の一部

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆:著)という書籍が話題になったように、私も社会人になってから、ほとんど本を読まなくなった。潮目が変わったのは昨年、心を入れ替えて勉強を始めてからだ。ただし、昔のように小説や伝記ではなく、お金の事や資格書など自己啓発の本が中心となった。

私は元々文学部の出で、実学とは無縁の世界の住人だった。しかし大人になり学生生活に別れを告げると、否が応にも「そっち」に目を向けなくてはいけない。今私はまさに「そっち」に本腰を入れて頑張り始めているが、弱音を吐くならばやはり少し疲れる。きっとこの世界は「そっち」が「こっち」の人達が上手い事立ち回り、それなりの人脈や資産を築くのだろうが、「そっち」がいつまでも「そっち」のままの私の様な不器用な人間は、(飛び抜けた才能を持つ一部の者を除いて)きっと最後まで社会的(経済的)に上手くいかないのだろうな、とも思う。

人にはそれぞれ適性がある。それは分かっているけれど、その各々の適性にぴったりはまって生きている人が、世の中にどれほどいるのだろうか。ほとんどの人が何かしら我慢して(あるいは妥協して)、それでも生きている。何かしら愚痴を言ったり、ネガティブな感情を抱え込んだり、あるいは諦めたりしながら。2年前までの私もそうだった。いや気付けば「そうなっていた」。

先月、転職活動だの資格勉強等、なんやかんやと立て続けに予定を入れ過ぎて精神的にも肉体的にも相当参っていた時期、ふと本棚に収まっていた金城一紀さんの本を取った。時間は惜しかった。けれど「今、読むべきだ」と私の本能が訴えていた様に感じ、逃避的に読み耽った。そしてそれは正しかった。私はそれなりの力を本からもらい、何とか先月を乗り切ったのだった。

思い起こせばそれぞれの何かしらの大きな人生のステップで、何度か金城一紀さんの本には助けられたような気がする。そんな私の好きな作家、金城一紀さんの本のお話。

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映画篇

映画篇

『映画篇』 金城一紀:著 新潮社

子供は余計な心配なんてしなくていいんだよ。子供はね、好きな食べものと、大人になったらなりたいものと、好きな女の子のことだけ考えてればいいんだよ。わかった?

ー『映画篇』ペイルライダーより引用

私は御存じの通り中年だ。だが、当たり前だが私も昔は少年だったり青年だったりした。そしてその頃の私は、きっと今よりももっと多感で、愚かで、そしてがむしゃらだった。人生を知ったかのような口ぶりの大人には虫唾が走ったし、本当は何も分かっていないのに「分かった事にしている」大人にはなるまい、と思っていた。私は学生時代の大半を費やし「人生の何たるか」を探したが、結局何も分からなかった。そして私はそのまま大人になった。

今回読んだ『映画篇』は、そんな大人を「多感で、愚かで、そしてがむしゃらだった頃」に戻してくれる力を宿している、そんな本だ。5つの物語で構成されているが、それぞれの物語の主人公は区民会館で上映された『ローマの休日』の鑑賞を契機に、それぞれの人生で新たな一歩を踏み出す。

(少なくとも私の知っている)金城さんの本の主人公は、だいたいが上記で綴ったような少年や青年であり、みな不器用に生きている。そして社会に居場所を求めている。しかし、それは中年となった今の私と本質的に変わったのだろうか?年齢など関係なく、結局同じなのではないのだろうか?

ユウはがっかりしてついたため息を、そのまま深呼吸に変え、しっかりと顔を上げた。

動悸がぜんぜん静まらない。

心臓が爆発し続けている。

今日は遠くへ行ってみよう。

ユウはそう思い、背筋をぴんと伸ばして視線を左右に走らせた。

どっちにだって行けるんだ。

どこにだって行けるんだ。

ー『映画篇』ペイルライダーより引用

そう、私はまだ「何も分かっていない」。まだどこにだって行けるんだ。

そんな力強いメッセージを与えてくれる金城一紀さんの本、人生の岐路に立っている方は是非読んでもらいたい。余計な心配をしてしまうあなたの背中を、そっと押してくれるはずだ。

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