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2ちゃんねると私
図書館の自己啓発本コーナーの中に、ひろゆき(西村博之)氏の書籍群がいくつかあったので手に取ってみた。言わずと知れた巨大匿名掲示板「2ちゃんねる」の創設者・管理人だった方だ。今はもう2ちゃんねるは無いみたいだが、世代的に当時2ちゃんねるはある程度見ていた。AA(アスキーアート)職人ってすごいよね、と言うのが当時も今も素直な感想。2ちゃんねるを代表するAAは「モナー」、私は「荒巻スカルチノフ」というAAが大好きで色んな荒巻スカルチノフを探しては笑っていたような思い出がある。


この荒巻スカルチノフは基本的にいつも寝ている。空から降ってきて「ビターン」と地面に打ちつけられても一瞬驚くだけでそのまま「スヤァ」と寝てしまったり、爆発してしまったり、自転車で轢かれてしまったりと、何をされても寝ている。今ネットを漁って懐かしい邂逅を果たしても、やっぱり笑ってしまった。おっ、荒巻スカルチノフTシャツ売ってるじゃないか!かわいい。

『1%の努力』読書感想文
『1%の努力』ひろゆき:著 ダイヤモンド社
そんなこんなでひろゆき氏。最近はコメンテーター等でよく見かける人になったが、やはり物の考え方は勝者のそれ。全体的な内容は良く見られる自己啓発本に似ている・・・が、堅苦しさは一切ない。
必要だったのは、お金や時間ではない。「思考」だった。工夫を取り入れ、「やり方」を変えられること。ヒマを追求し、「何か」をやりたくなること。
(中略)
スケジュールを埋めるな。「余白」を作れ。両手をふさぐな、「片手」を空けよ。
(中略)
どうやって「やり方」を変えるのか?その「考え方の考え方」を教えよう。
序文より引用
いつチャンスが来るかは誰にも分からないが、いざそのチャンスが目の前に来た時にきちんと掴めるようにしておく。全力で取り組み過ぎている(両手がふさがった状態だ)と、目の前のチャンスに気付くことが出来ず、スルーしてしまう。本書は、ひろゆき氏の「考え方の考え方」が結構前後の脈絡無く綴られているが、全般を通して貫かれている根底の思想は「ヒマであれ(片手を空けておけ)」という事だ。(片手を空けておくために)物事の優先順位を考えましょう。(片手を空けておくために)ポジションを考えましょう。(片手を空けておくために)ニーズを把握しましょう。(片手を空けておくために)働かないアリになりましょう・・・。ああ『運』を逃すなという事か。と、私はある書籍を思い出していた。
私が思い出した書籍は『天才! 成功する人々の法則(マルコム・グラッドウェル著)』だ。この書籍は発売当時、「天才はいない。1万時間を費やせば誰でも一流になれる」との内容で話題になった。(しかし後の研究で、やはり遺伝的な要素は大きく、費やした時間だけでは測れないことが証明された。つまり残酷だが『生まれ持った才能』はあるのだ)。しかしこの書籍で強調されていたのは話題になった「1万時間」だけではなく、『運』の重要さだ。
「適した時(年)代に、適した場所にいたか」。
いくら物事が上手く出来ても、上記が無いと『天才』になりえない。いくつか例を話すと、年度初めに生まれた人の方が、年度後半に生まれた人よりも何をするにも圧倒的に有利だという現実だ。日本で言うならば4月生まれに近ければ近いほど有利。最初の僅かな差が、成長していく過程で行われる数々の選抜を経て、埋めることの出来ない差になってしまう。また、スティーブ・ジョブズがITで成功できた(1万時間費やすことが出来た)のも、幼少期、たまたま近所にまだ一般的ではなったコンピュータが気軽に触れることが出来る環境があったからだ。これらはもはや個人の努力だけではどうしようもできない『運』だ。
ただし『運』は生きていく過程で、(生まれた年代等は難しいが)『掴む事ができる』。ジョブズはたまたまあった「コンピュータにいくらでも触れることが出来る環境」を掴んだ。この運を『運』だと認識して掴めるかどうか。『1%の努力』で綴られているのも、まさにこれだ。
「片手を空けておけ」。
彼独自の感性と言葉で伝えているため、ひろゆき氏は面白い。「堅苦しい如何にもな自己啓発本は苦手」という方に、本書は特にお勧めだ。