
イーロン・マスクを知ろうとしたきっかけ
昨年の秋、新刊並ぶ図書館で1冊の書籍が目に留まった。書籍の名は『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』。タイトル通りイーロン・マスクに買収されたTwitter社日本社長の回顧録だ。気になって手に取り、読了。当時Twitterで働いていた実に8割もの社員がFIREされる過程が、最終的には自身もFIREされるまで綴られるなかなか凄まじい内容だ。こちらは「クビを切られた側」の視点で綴られるイーロン・マスク像を炙り出しているが、日本と米国で物理的な距離が離れており、また直接の接点があまりなかったため、あくまで断片的な姿しか知りうることが出来ない。

そんなイーロン・マスクが、アメリカ大統領選でトランプ陣営に加わって演説している姿を見た。なんでもトランプ当選の際には次期政権で重要なポストに就くらしい。気にはなる。確かイーロン・マスクの半生を綴った本、去年ベストセラーになってた気がする。そんなこんなで「どんな人なのか、もっと詳しく知っておく必要があるかな」と重い腰を上げ、苦手な伝記本(しかも上下巻!)を読み始めたのだった。
『イーロン・マスク 上下巻』読書感想文
『イーロン・マスク 上下巻』ウォルター・アイザックソン著 文芸春秋社
イーロン・マスクが出生してから本が出版されるまでの2023年初頭までの期間、上下巻を通して彼の半生がほぼ時系列的に綴られている。上巻を読了したのが昨年暮れ。下巻を読了したのが最近なのでかなり間が空いてしまった。理由は2つあって、1つ目は単純に読みたいタイミングで既に借りられていた事(私は図書館ユーザーです)と、2つ目は彼の「戦いの歴史」に私が小休止が欲しくなったからだ。
命がけの戦いこそ、前に進み続ける原動力なのです
-イーロン・マスク
代表的なフレーズであるこの言葉に、彼の人生は集約されている。まあ本当常に戦い続けているのだ。現状に満足など全くしない。彼は言う。「全てを疑え」。徹底的なコスト(無駄)排除、排除しきったと周りが思っていようが疑いを止めない。「できない」「不可能」と言う者には信じられない程怒りをあらわにして罵倒する。時間がない。実現したい未来がある。彼は本気で人類の未来を考えているので、その実現の為に部下の妥協は許さない。
自分の存在すべてをミッションに投じるんです。そして、自分がそうするんだからほかの人もそうすべきだと考えます。これにはいい面と悪い面があります。自分自身も、大きな目的を達成する道具なのだと認識することができて、それは素晴らしい事だと思います。ですが、道具はだんだんと傷むもので、その時は交換すればいいと思ってしまうことがあるんです。
イーロンの下で働くのは、すごく刺激的ですばらしいのですが、ほかのことをする時間が無くなってしまいます。
上記はスペースX(イーロン・マスクが立ち上げた宇宙ロケット会社)で働いたエンジニアの言葉だ。もちろんこのエンジニアも既にイーロン・マスクの元を離れている。部下と戦う、政府とも戦う、ワークライフバランス?そんな事をいう奴は去れ。そうしてイーロン・マスクは、一見すると飛び越えられない実現不可能なハードルをいくつも自ら作り出し、それらを飛び越え不可能を可能にしてきたのだ。
イーロンほど1分当たりに学べることが多い人にはあったことがありません。そういう人に人生をつぎ込まないのは愚かだと思います。
上記は、イーロン・マスクの立ち上げた人工知能を開発する会社、ニューラリンクの幹部にして、後に人工授精でイーロン・マスクの子供を身籠る女性のセリフだ。このセリフに、マスクの魅力が垣間見える。走り続けている人の周りには、同じように走り続けている人が自然と伴走するようになるのだろう。
『イーロン・マスク』は常に全力で疾走している彼の狂気の物語だ。そしてその狂気は今もまだ続いている。
終わりに
私は『イーロン・マスク』を読みながら既視感にとらわれていた。それは数年前読了していた『スティーブ・ジョブズ』(Apple創設者)や『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』(Amazon創設者)と酷似しているように感じたからだ。アントプレナー達の生き様は、どれもこれも凄まじいほどの熱量を放っているが、自伝は彼らの歴史を詳しく記しているので、それぞれ読了するのに(私は)かなり時間を要する。彼らの考え方や習慣は「成功者の習慣」として、よく自己啓発本等にまとめられているのでそれらを読了するのもいいだろう。だいたいの自己啓発本で重複している事は以下になる。
- 失敗を恐れず、挑戦する
- とりあえずやってみる、失敗したらそこから学ぶ
- 明確な目標を持ち、継続的に改善し続ける
- 没頭して取り組む
- すぐやる(時間の価値が高い)
- 決めたことはやりきる(習慣化)
- 睡眠をきちんと取る(ジェフ・ベゾスは毎日8時間は必ず眠るようにしている)
アントレプレナー(entrepreneur)とは、ゼロから事業を立ち上げ、価値を生み出す起業家や事業家を意味する言葉です。イーロン・マスクやジェフ・ベゾスは現代を代表する有名なアントプレナーです。ちなみに二人のバトルも『イーロン・マスク 下巻』で綴られています。同族嫌悪でしょうか・・・。
とあるビジネスサミットで「あなたのようになりたい人へアドバイスを」と話を振られたイーロン・マスクの言葉で最後は締めたいと思う。
「本当に私のようになりたい人がどれほどいるのでしょうか。私は異次元の拷問を自分に科していますから」
いや私には無理だわ。
こちらが上下巻
イーロン・マスク 下 [ ウォルター・アイザックソン ]