【読書】Audibleで聴いた本まとめ⑤『うつくしが丘の不幸の家』『そして、バトンは渡された』『楽園』
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私のランニングのお供・Audibleで、最近聴いた本のまとめ記事です。本選びのご参考にして下さい。

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『うつくしが丘の不幸の家』 町田そのこ

住環境はいいけれど少し交通の便の悪い比較的新しい住宅街「うつくしが丘」にある、とある一軒家にまつわるお話。その一軒家を中古で購入した夫婦は改装し、競合が少ない美容室をオープンしようと奔放していた。そんな折、ご近所のおばさんに不吉なことを言われてしまう。購入した一軒家は「不幸の家」だと。
この物語の面白いところはこの「不幸の家」に代々住んできた人たちの暮らしを、時代の新しい世代から遡って語られることだ。家というのは、前に住んでいた人たちの痕跡が何かしら残っている。今住んでいる人たちには分からないその僅かな痕跡にも、前に住んでいた誰かの想いが込められており、世代を遡るにつれてそれらが明らかになっていく様はまるで謎解きみたいで単純に面白かった。
傍(はた)から見ると不幸だと見られる家庭にもそれぞれの事情があり、実際に不幸だとは限らない。逆に、傍から見ると幸福だと見られる家庭にも、(特に立場によっては)幸福とは言えないことが見えてくる。傍から見る人、隣の家、家庭内のそれぞれの立場・・・、不幸も幸福も人それぞれ。当たり前と言えば当たり前の事なんだけれど、その微妙な機微を「1つの家」という軸で、しかも時間を遡行しながら描き出す町田さんの作家としての技量は「さすが」の一言です。最後の収束もお見事。読み(聴き)終わったら、久しぶりにビワ食べたくなりました。

『そして、バトンは渡された』 瀬尾まいこ

僅か十数年の人生の内、母親2人・父親3人という何だか複雑すぎる家庭環境で育った「ユウコ」の、高校3年生~結婚するまでの物語。話のメインは高校3年生の1年間+そこに至るまでの人生の回想で、最後の方で少し時代が飛び大人になったユウコの結婚に至る場面が描かれる。
登場人物たち(歴代の親たち)が基本的に皆良い人たちで、最近町田作品を多く聴いてきていた私としては何だか裏がありそうで逆に不安になったが、最後までそんなことは無し。善人たちによる善人たちの「バトンパス」の物語だった。バトンとはもちろんこの場合、ユウコを表している。
正直、私的には物語の大部分を占める高校3年生の1年間のお話は退屈だった。生い立ちが複雑なユウコだが、だからと言って何かとんでもない出来事が起こる訳でもなく、あくまで普通にありそうな女子高生の日常が淡々と描かれる。しかしこの日常の描写が丁寧であるからこそ、後半の結婚に至るお話が強烈な輝きを放つ。親には親の事情があり、それは「娘の為を思えばこそ」言えなかったり、表面に出せなかったりする。一見スムーズに行われてきたと思われたバトンパスも、実情はそんなに単純ではなかったことが分かる。バトンを、渡さざるを得なかった者。渡したくなかった者。選ばれなかった者。取り戻そうとした者。そして、最後には全て受け入れた上で、次の者へ渡す者。
親として読む(聴く)か子供として読むかでも、かなり感じ方が変わる本書。ユウコの、加齢と共に新しい視点が付与されていく様も「分かるなぁ」と共感を呼ぶ。成長とは新しい視点の獲得。大人だからって「成長した」とは必ずしも言えないのが世の難しいところ。私もまだまだ成長しなくちゃ。。
本書にてらすと、私も義両親からバトンを受け取った者だと言える。バージンロードって見方を変えると正に「バトンパス」ですもんね。襟元を正すきっかけを頂いた珠玉の1冊でした。
(独り言)モリミヤさんがいい人過ぎて、私的にちょっと現実感が沸かないのが玉に瑕。

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『楽園』 鈴木光司

1990年代に一世を風靡したホラー小説『リング』を執筆した鈴木光司さんのデビュー小説。私は世代的にど真ん中で、『リング』『らせん』『ループ』『バースデイ』を始め、『光差す海』『生と死の幻想』等、学生だった当時、鈴木作品をいくつも読んだ。特にこの『楽園』は、「人生で好きな小説を10個あげろ!」とか言われたら恐らくその中に入ってくるくらい何度も読み返した大好きな作品だった。Audibleを漁っていたら鈴木光司作品も聞けることが分かり、この度30年ぶりくらいに読んだ(聴いた)が、やっぱり面白かった。
『楽園』は、およそ1万年から現代へと続く、何百世代にも渡る愛の物語。物語は三部構成で、1万年前、1700年代、現代(1990年代)と描かれる。女が戦利品だった1万年前、心の奥底から愛し合った妻は違う部族に奪われ、その部族と共に北の回廊を通じて新大陸へと渡ってしまった(つまりユーラシア大陸から北アメリカ大陸へ)。引き裂かれた夫婦。しかし、妻はお腹に夫の子供を宿していた。夫は閉ざされた北の回廊を諦め、舟を作り南から海洋を渡ることを決意する。1万年前だ。お互い正確な場所など分からない。渡ろうとしている海がどれだけ広いのか知る由もない。けれど、そんな事はどうでもいい。本能が告げている。「とにかく東へ」。ただただ最愛の妻との再会を夢見て、夫は赤い鹿の精霊と共に大海原へと漕ぎ出すのだ。
非常にロマンチックな話だと思う。そんな馬鹿な、とも思う。けれど、実は気付いていないだけで「案外よくある事なのではないか」とも思う。1万年前の地球の人口なんてたかが知れており、今の私の妻とも、先祖を辿っていけばどこかでロマンチックな邂逅があったのかもしれない。「一目惚れ」とか「ビビビッときた」(古い)とか「初めて話したとは思えないほど気が合う」とかは、実は既に1万年以上前の結び付きなのではないか。そんな事を思うと「運命」とかも馬鹿にならないなと感じる。
まだ恋も愛も、いや世の中の事など何も知らない青二才だった当時の私は、ただただ純粋な憧れと畏怖の念を抱いて夢中でページをめくったものだった。今回本書を読み(聴き)返し、当時思春期の葛藤を拗(こじ)らせまくっていた自身の姿を、少しの痛みと共に思い返した。当時の私は「今」を生きるのに精いっぱいで、夢や希望・未来など思い描く余裕は全く無かった。自身が何者なのかすら分からなかった。存在意義など、何ら見い出せなかった。そんな中手に取った本書は、暗闇の中でやみくもに足掻いていた当時の私を、力強く未来へ導いてくれた一筋の光だった。
1万年の時を経て、夫婦は再会できたのか。強く願ったお互いの意志は、(例え何百世代を経たとしても)叶うのか。是非多くの方にこの壮大な愛の奇跡(軌跡)に触れて欲しいと願う。鈴木光司さん。素敵な、本当に素敵な物語をありがとうございました。ご冥福をお祈りします。合掌。

鈴木光司さんは今年初夏、2026年5月8日に他界されました。
泣きました。

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まとめ

聴きたい本が山の様にあって時間が足りません。皆様も是非「聴く読書」をご利用ください。

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