
以前記事で書いたが、私は数か月前「聴く読書」ことAudibleの会員になった。
加入理由を簡単に言うと、ランニング中の時間をより有意義に使いたかったからだが、返す返すもこれがなかなかいい。本当にいい。私は1月概ね150km~200km位走っているが、10kmで1時間だとして毎月15~20時間以上は確実に聴いているし、通勤や家事の合間にも聴いているので実際はもっとになるだろう。
という訳で、聴いた本をただ「面白かったです」と終わらせるのではなく、それなりにコメントをして記録として残していこうかと思う。まあ自身の備忘録みたいなものだが、同じくAudibleなり「聴く読書」をしている方の何かしらの参考になるかもしれないという期待も込める。最近は本のレビュー記事がおなざりになっているのもあって懺悔的な意味合いもあったりする。資格勉強がね・・・まあその為の聴く読書だったりもするので、良しとしよう。(そうしよう)
『月とアマリリス』 町田そのこ
(私がこれまで読んできた)町田そのこさんの作品の中では少し異質な作品。
主人公である雑誌記者の女性が、自身のトラウマと向き合いながらも実家周辺で起こった殺人事件に強い興味を持つ。様々な方へ取材を重ね、葛藤しながらも事件の真相に近づいていくといったミステリー色の強い作品。
けれど根底にあるのは「町田節」と言うべきか、壮絶な暴力とそれに翻弄された人々の苦悩の描写。町田さんのこの暴力への執念というか「絶対に目を背けない」といった強い意志は凄まじい。ただこの作品で強調されているのはその暴力を伝える側のあり方。「ペンは剣よりも強し」という格言があるが、時に暴力とは肉体的なダメージだけにとどまらないという事を、この作品では気付かせてくれる。
人は自身が受けた暴力はいつまでも覚えているのに、自身が振るった暴力にはひどく鈍感だ。特に精神的な暴力に関して。私にもその自覚は大いにある。自身が言われて嫌だったことは覚えているが、では自身が発した言葉は誰かを傷つけていなかったのか?それは暴力ではなかったのか?
作品内ではこうした精神的な暴力に、それぞれ当事者が「気付いていなかった」という場面が散見される。何気ない子供時代の会話、トランスジェンダー、偶然出会った街角で・・・。
自身の今までの言動を思い起こし、身の引き締まる思いをした良作。
『宙ごはん』 町田そのこ
少し変わった境遇の女の子「宙」(そら)の成長の物語。幼少期から成人になり独り立ちするまでを描く。奔放に生きる生みの親、しっかり者が行き過ぎて少し面倒な育ての親、あまりに良い人の料理人やっちゃん。
いくつもの出会いや悲しすぎる別れがある。世の中は理不尽だ。宙の望む未来はいつも来ない。けれどつぶさに見つめると、それは私自身が歩んできた道とも重なるように思う。人は結局思い通りの人生など送れず、常に発生するイレギュラーに対処し続けなければならない。
宙は料理を通じてそれらを少しずつ咀嚼し自身の成長へと繋げていく。家族とは何か。真に愛するとはどういうことか。知っていた者。知らなかった者。あえて伝えていなかった真実。女の子の目線を通じてみる大人の世界は摩訶不思議だけど、自身の成長とともにそれらがゆっくりとほどけていく様は、読んで(聴いて)いて心温まる瞬間の連続だった。良作。
『星を掬う』 町田そのこ
元夫からの搾取と激しい暴力から逃れた主人公が、幼少期の自身を捨てた母親と再会し同居しながら自身を見つめなおす物語。同居先は主人公親子以外にも複数人の女性たちが共同生活を営んでおり、それぞれにトラウマを抱え、だけど力強く自身の人生を生きている。
「母に捨てられた」と自覚している主人公の女性が、そのトラウマを抱えながらも少しずつ「拗(こじ)れた物の見方」を改めていく。若年性認知症を患い、少しずつ、けれど確実に壊れてゆく母。自分が自分らしく生きることを選択し、娘を捨てた母。相容れない親子の主張。
母に捨てられた事を今現在の自身の境遇の言い訳に据えていた主人公へ、母は叫ぶ。「行(生)きな!」と。DV元夫へ対峙した主人公の目に力が宿る。
私は私の人生を生きる。
主人公が「自分の人生」を歩みだすまでの、苦しくもすがすがしい後味を残す物語。
『蛍たちの祈り』 町田そのこ
第一章から涙無しには聴いていられない。いやこの第一章の切なさ・美しさたるや、私の読書歴の中でも抜きに出ていると言っても過言ではない。ランニングしながら普通に号泣した。
人殺しは確かに犯罪だ。言うまでもなく悪いことだ。だが、この一章はあんまりだ。
お腹に宿る小さな命とともに自殺を決意したユキエは、蛍舞う山奥の沢で男と偶然再会する。その男はお互いが中学時代、同じ場所である秘密を共有したタカユキだった。
この作品は各章毎に主人公(視点)が変わり、計20年以上に渡って描かれる。「子供は親を選べない」という残酷な真実が、ユキエの子供・正道(マサミチ)に重くのしかかる。Audibleで聴いているので普通は登場人物達の名前の漢字がわからないのだが、この「正道」だけは分かる。その由来にも涙した。
終始切ない。身勝手な者、孤独な者、取り繕う者、満たされない者、寂しい者。愚かな者。あえて間違う者。手を差し伸べる者。突き放す者。無関心な者。愛する者。様々な人間模様が私の心を震わせる。最終章だけ少し尻すぼみしたような感じがしたけれど、総合的に素晴らしい書籍だった。読み手の声も作品にすごくマッチしていて良き。おすすめの一冊。いつか活字でも読み直そ。
町田そのこさんは、この2か月だと以上になります。
『それいけ!平安部』 宮島未奈
『成瀬は~』シリーズで一躍時の人となった宮島未奈さんの学園もの。私は『成瀬は~』シリーズ三部作と『婚活マエストロ』を読了していたので、こちらも聴いてみた次第。
『成瀬は~』を読んだことのある方は分かるかと思うが、こちらも主人公は「高校に新しく平安部を作る!」という破天荒な事を言う本人ではなく、それに振り回される同級生の友人。『成瀬は~』のシマザキみたいなものです。
なんだかんだありながら平安部が出来て、手探りながら色々と課題を乗り越えるごとに部員の結束が高まって・・・といった、王道の青春成長ストーリー。部員が円陣を組んで「それいけ!平安部」と気合を入れる場面が心地よい。余談だが私の好きな作家・中島らもの『水に似た感情』内でも円陣を組むくだりがあり、「行くぞ!行くときは一緒だぞ!」といった(筆者本人も認める少し卑猥な)掛け声があり、私は昔から円陣というものに何となく憧れがある。だからバスケの円陣も好き。
そんな宮島さん通常営業の良作。
『イン・ザ・メガチャーチ』 朝井リョウ
「熱狂」の、恐ろしくもリアルな裏側を赤裸々に描く。熱狂の仕掛け人、徐々に熱狂に巻き込まれる人、既に巻き込まれており後に引けなくなった人。三者三様の視点で順番に何周も入れ替わりながら話は進む。
私は無宗教だが、だからと言って何も信じないわけではなく、結局のところ人は何かしらに縋りながら生きているのだと思っている。宗教も熱狂も、構造としては同じだ。つまり、何かに縋りたい人の性質を利用した都合の良い「箱」なのだ。それは物語性を帯び、自身を投影できるとなお効果を発揮する。
誰もが頷くと思うが、人は「自分で考える」のは酷く疲れる。できれば誰かの用意した答えに脳死でついていきたい。その方が圧倒的に楽だからだ。誰かが用意してくれた「熱狂」の中に身を委ねさえすれば、仮初めの幸せを享受し続けられる。
作中に出てくる人は、気付いている。この先に希望などないことなど。それでも、分かっていてもそこに身を置く。むしろより深くのめりこみ、おかしいのは「自分たち以外だ」という考えにまで振り切る者も出てくる。
客観性とは何か。幸せとは何なのか。彼らの選択は周りから見ると滑稽ですらあるかもしれないけれど、とても他人事とは思えないリアルな恐怖を抱かせた。なぜなら、私も彼らと同じように、所詮「何かに縋りたい人間」だからだ。ラストの恐怖は必読。是非多くの方に読んで欲しい一冊。
まとめ
半分も書ききれていないが、時間がかかり過ぎるので明日続きを書くことにします。。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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